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骨盤の傾きと立体化

骨盤を立体で捉える

人体のドローイングでは、胴体をシンプルな箱として捉えることから始めます。その土台となるのが骨盤です。骨盤は単なる平らな形ではなく、下半身全体の動きを司る複雑な3D構造をしています。この立体感を理解することが、説得力のあるポーズを描くための鍵となります。

まず、骨盤を一つの箱、あるいは少し傾いたボウルのような立体としてイメージしてみましょう。この箱には前面、側面、そして底面があります。この箱がどのように傾くかによって、腰周りのシルエットや脚の付き方が劇的に変化するのです。

Lesson image

この骨盤という箱を正確に描くためには、目印となるポイントが必要です。コンパスの針を置くように、これらのポイントを基準にすることで、どんな角度からでも骨盤の傾きを正確に捉えることができます。

ランドマークを見つける

複雑な骨盤の形を単純化するために、アーティストはいくつかの「ランドマーク」となる骨の突起を利用します。最も重要なのが、上前腸骨棘(ASIS)と上後腸骨棘(PSIS)です。

難しそうな名前ですが、要は「腰骨の出っ張り」のことです。ASISは骨盤の正面にある、左右の最も突き出た部分。ベルトを締めるときに触れる、あの硬い骨です。一方、PSISは背中側、お尻の少し上にあるくぼみ(えくぼ)ができるあたりに位置します。この二つのポイントを結ぶ線が、骨盤の基本的な傾きを示してくれます。

骨盤の3つの傾き

ASISとPSISの位置関係を意識することで、骨盤の主要な3つの傾き、「前傾」「後傾」「側傾」を理解できます。これらの動きが、キャラクターのポーズや感情表現に深みを与えます。

前傾 (Anterior Tilt): ASISがPSISよりも下にくる状態です。お尻を突き出し、腰を反らせたポーズでよく見られます。背骨のS字カーブが強調され、女性的なラインや、自信に満ちた立ち姿を表現するのに役立ちます。

後傾 (Posterior Tilt): ASISがPSISよりも上にくる状態です。猫背で少しだらしない印象のポーズや、疲れて椅子に深くもたれかかっているような姿になります。腰のカーブは平らになり、お尻は平坦に見えます。

側傾 (Lateral Tilt): 左右のASISの高さが違う状態です。片足に体重をかけて立つと、体重を支えている側の骨盤が上がり、反対側が下がります。これにより、人体の自然なS字の立ち方(コントラポスト)が生まれ、ポーズにリズムと生命感が生まれます。

これらの傾きは単独で起こるだけでなく、組み合わさることもよくあります。例えば、片足に体重をかけながら(側傾)、腰を少し反らせる(前傾)といった具合です。この複雑な動きを捉えることが、リアルな人体ドローイングへの道です。

脚との接続点

骨盤は下半身の土台であると同時に、脚との重要な接続点でもあります。脚がどこから始まっているのかを正確に把握することで、プロポーションの崩れを防ぎ、自然な動きを描くことができます。

脚の付け根は、股関節、つまり大腿骨(太ももの骨)が骨盤にはまる部分です。この接続部の外側にある骨の突起が「大転子」です。これは、お尻の横あたりで触ることができる硬い部分です。ドローイングにおいて、脚の回転軸はこの大転子の位置になります。

大転子の位置は、おおよそASISから真下に降りてきたあたりにあります。モデルが立っているポーズを描く際は、この位置関係を意識すると、脚の長さや角度を決めやすくなります。

骨盤を箱として描き、ASISの位置を決め、そこから大転子の位置を見つける。そして大転子から脚を描き始める。この手順を踏むことで、これまで感覚で描いていた腰周りの難しいラインを、構造的に理解して描けるようになります。写真模写でシルエットがうまく取れない時も、内部の骨盤がどう傾いているかを想像することで、迷いがなくなります。

Quiz Questions 1/5

人体ドローイングにおいて、骨盤の正面にある最も重要なランドマーク(目印)となる骨の突起は何ですか?

Quiz Questions 2/5

お尻を突き出し、腰を反らせた自信に満ちたポーズを描く場合、骨盤はどのような傾きになりますか?